2024 年某日。すっかり食べる専門になった弱小食べ歩きに、ありがたくも前回に引き続いてお店の PR をお願いしたいとシェフから直接のご連絡をいただき、銀座の Restaurant DESTINA さんへ伺ってきました。
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「前回」と書いたのも、DESTINA さんは銀座でファンも多かったフレンチである旧「ル・シーニュ」さんが心機一転、GinzaSIX の裏手にオープンさせたレストランで、前身のル・シーニュも PR させていただいたご縁です。アラン・デュカス 東京で副料理長、旧軽井沢ホテルの総料理長などを歴任した上野シェフ、久々にお会いしましたが穏やかな人柄と料理に向き合う際の真剣さのギャップが相変わらず凄まじい。この日も暖かく迎えてくださり感謝申し上げます。
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さて件の DESTINA さん、ビルの 10 階へ位置しておりエレベーターを降りると即お店へ通じる作りとなっています。ル・シーニュへ訪問した方は分かりますが、以前のお店はカウンター席の後ろがとても狭く、どうしてもお店がコンセプトの一つとしている「古き良き銀座で高級フレンチ」というテーマに影を落としていました。しかし、新店 DESTINA さんは着席時に広くカウンターキッチンが見渡せる余裕のある配席となっており、その余裕を活かした付かず離れずの心地よいサービスとコンセプトに合致した雰囲気を楽しめます。まさにミッシングピースがハマった印象。キッチンにも奥行きがあり、スタッフも増員されたようです。聞けば個室も設えており、ちょっとした会食にも対応できるようになったのだとか。
本題の料理はというとル・シーニュでのコース内容をベースとし、随所に新店ならではの遊びを入れるスタイル。お店のシグニチャーメニューでもあるキャビア・銀箔・ジャージー牛のクリームの絶妙な組み合わせの「銀座」とクリュッグのマリアージュ、種々のボルディエバターのセレクション、「黒雪」など上野シェフの経歴を思わせるメニューはそのままに、遊び心あふれるコース内容となっています。この構成から上野シェフとしては料理は前身のお店から一定の完熟度と自信を持っておられて、新しいお店での環境とサービスの充実により、レストランとしての完成形へと近づけようとした印象を受けました。この辺り、ル・シーニュのファンだった方には間違いない内容です。
また、この日にいただいた新しいお皿では、シェフの意気込みも感じられる色鮮やかな白・緑・桃のドットが映える「心機一転」が印象に残りました。上野シェフといえば、目にも美しい一皿での表現が特徴的。幾何学的な表現はアラン・デュカスでの経験でしょうか。そして三色ドットの下の茄子のピューレがひかれた下には蝦夷鮑とバフンウニが眠っています。鮑・雲丹といえば、ついつい写真映えのために表に出してしまいそうなところをしっかりとムースの下に仕込んでいるのがシェフらしい。そして、ペアリングの Domaine Gresser Grand Cru Kastelberg Riesling 2007。こちらもリースリングとは思えない甘さ抑えめのすっきり果実み推しのタイプで、しっかりと料理を支えていました。どちらからも表面からは見えない内に秘める情熱やイズムを感じる内容で、それらがシェフを想起させて個人的には楽しかった。こういったシェフの人柄やお店の成り立ちも楽しめる方にはとても刺さるお店だと思います。
総評としては、前身のル・シーニュのファンのみならずクラシックフレンチファンへも推薦したい素敵なレストランでした。お店のスタッフの皆様もとても気さくで、色々な話に応じてくれました。また、同ビル 12 階にある MORI BAR GRAN で、世界レベルのカクテルを桜の木の下で楽しめる流れに綺麗に繋がるのもポイントが高い。銀座の夜のデートコースとしては一つの最適解なのでは。素敵な料理にペアリング、ご馳走様でした。